企業の海外展開の話になると、いかにしてビジネスとしての利益を出すかという
話題に終始しがちです。
しかし、利益重視のビジネスだけに海外事業は留まりません。
特殊な蚊帳「オリセット®ネット」を開発し、
アフリカのマラリア問題に立ち向かっている住友化学の事例を紹介します。
まず、アフリカの現状について説明します。
アフリカでは、蚊が媒介するマラリア原虫による
感染症で命を落とす人が後を絶ちません。
発展が遅れ財政的に苦しいアフリカ諸国では、
マラリア対策に回すお金がないことに頭を悩ませていました。
そのような状況の中で、日本で培ってきた独自の技術を生かして
マラリア対策に挑んだのが住友化学でした。
ポリエチレンにピレスロイドという防虫剤を練りこみ、
防虫効果を高める「コントロール・リリース」という技術を生かしました。
元々工場用の虫よけ網戸の技術として使われていたものを、蚊帳の開発に転用。
現地の気候に合わせ風通しの良い網目の組み方を模索するなど研究を重ねました。
その結果誕生した「オリセット®ネット」は、
洗濯しながらでも5年間の長期間にわたって効果を持続する画期的な蚊帳に。
2001年には世界保健機関(WHO)から世界で初めて
長期残効型蚊帳としての効果が認められました。
今では、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、
80以上の国々に供給されるまでになっています。
「オリセット®ネット」は、アフリカ中で活躍し
何十万人という人々の命を救っているのです。
また、現地の企業に技術を無償提供。
パートナー企業と組んで現地で「オリセット®ネット」を生産、
最大7000人の現地雇用を生み出したと伝えられます。
住友化学のビックプロジェクトは雇用の創出にも一役買っているのです。
住友化学としては、「オリセット®ネット」を
あくまで社会貢献の一環として位置づけています。
事業による収入も、大半をアフリカの教育関係事業への
寄付などに回すなどしています。
ですが、「オリセット®ネット」のプロジェクトによって
住友化学の名声は世界的に高まりました。
アフリカでは、「オリセット®ネット」は
一種の信頼できるブランドとなっています。
事業の海外展開を行う中で、企業の信用は非常に大切です。
住友化学は「オリセット®ネット」によって
国際的な信用を勝ち取ることに成功しました。
技術力と高い志が世界に向けて宣伝され、
事業を海外展開していく上で売り上げ以上に大きな成功を残したのです。
海外展開は利益を追い求めるだけの方策ではないことを、
住友化学の「オリセット®ネット」は示しました。
CSRの一環としての海外展開にも、これからは目を向けていきたいですね。
参考 住友化学のホームページ マラリアへの取り組み
https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/society/region/olysetnet/initiative/