「日本製品を売る、宣伝する」から「日本文化、伝統を共有する」へ

 

アメリカに限らず、海外に長く住んでいると、

「日本の伝統文化、伝統工芸を学びたい」という

熱烈な希望を持つ外国人が少なからずいることに気がつきます。

 

しかし、まだまだ海外の日本文化ファン層が

本物の日本の伝統文化、技術を学ぶことのできる機会は少ないようです。

また、日本人が「外国人が欲しいと思っているであろう」と

想像する日本のものと、海外の人が実際に「欲しい、知りたい」と

思っている日本とにズレがあるように見受けられます。

このあたりのギャップに、まだまだ発展の余地のある大きなニーズと

海外展開のビジネスチャンスが眠っているように思います。

 

日本の伝統文化ファン、というのはアメリカでは

ニッチではありますが、広大なアメリカ全土(特に西海岸)の

市場で見れば、その数はばかになりません。

刃物鍛冶、陶芸、木工、宮大工、染物、和紙、木版画、武道、

などを日本に行って直に学びたい、というアメリカ人は少なくありません。

残念ながら日本国内にその受け皿は少なく、

言葉の壁もあって外国の方々にとってはとても高い敷居があります。

 

また、日本の伝統工具の品質は世界中で高い評価を受けており、

ブランドとして確固たる地位を持っています。

しかし、残念ながら良質の日本の工具を取り扱う店舗も海外には少なく、

日本の伝統工芸を志す外国の方々はネットショップや

オークションサイトなどを利用し、苦労して手に入れているようです。

 

そうはいっても、外国人が日本の伝統技術を伝承する、

というのは日本人から見て、少し違和感を感じるかもしれません。

例えば、世界中に忍者道場があるのをご存知でしょうか?

世界で最も有名な忍者、と言われる初見良昭氏が開いた武神館道場です。

初見氏は、日本での昭和60−80年代の忍者ブームが過ぎ去った後も、

子供だまし、と日本では軽く受け止められていた忍術を、

現代にも通用する武術としてFBIや各国の軍関係者などにセミナーで指導し、

外国人門下生を集め、いち早く海外展開をしました。

もし、初見氏が積極的に海外展開を果たさなかったら、

彼の伝承してきた武術、忍術は日本の忍者ブームの終焉と共に

失われてしまったかもしれません。

現在87歳で現役の初見氏の千葉県の道場には、

未だに世界じゅうから「達人の元で神業のような本物の技を学びたい」、

という外国人修行者の足が絶えません。

 

また、漫画や映画で脚色された忍者のイメージの向こうにある

史実を突き詰めようと、日本に残された数々の古文書を紐解いて、

忍者や侍の兵法の歴史考証をし、古文書の英訳書籍を出版している

イギリス人研究者もいて、日本人だからわかっているつもり、

だった事を逆に海外の人に教えられる事があります。

昨今では忍者コスプレでインバウンドの外国人観光客を

誘致しようとする地方自治体もあるようですが、

本物の日本文化を求める人たちには、

そのような付け焼刃のごまかしはすぐに見破られ、

飽きられてしまうのではないでしょうか。

 

海外のファンたちの日本の伝統文化、技術へのリスペクトと眼差し、

日本文化を学ぼうとする真剣な態度は、

日本で生まれ育った日本人の私たち以上に熱いものがあります。

そういった海外の日本文化の良き理解者たちは、

日本文化の伝道師として、今後の海外の市場拡大にも

大きな役割を果たしてくれるでしょう。

メイドインジャパン製品を送り込んで消費していただくお客様、

としてだけではなく、こういった人々の切実なニーズに真摯に答え、

彼らを指導し、本物の日本文化、技術を共有、

伝承していくソフト面を考えることも海外展開のうえで

これから重要になっていくと考えられます。

 

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