寿司は全世界で最高に需要のある食品の一つだというのは当たり前になりつつありますが
日本においても寿司といえば高額であるという常識の通り
欧米やアジア各地においても非日常的な高価格で海外展開されることが多いようです。
しかし2019年現在、先進国の一歩手前まで経済成長を続けてきた東南アジアのタイ王国においては
驚くべきことに寿司というのは、日本における回転寿司と同じようなスタイルでも提供されるようになりました。
もちろんタイ王国においてもバンコクやチェンマイのような大都市では
日本に本社のある食品関連業によって海外展開され
日本で修行を積んだ一級の寿司職人が良質なネタを使って
日本で食べるのに劣らない味の寿司を出す店もありますが
それに伴って低所得な階層も日常的に日本で言うところの「廻る寿司」に近いものを毎日食べるようになってきました。
タイにおいて安価な寿司が提供される場合は屋台なので、もちろん食卓は回っていませんが
日本で100円で供されているものが、40円ほどで供されているので完全に庶民向けの価格と考えてよいでしょう。
そしてこれはすでにアイディア商品のレベルを通り越していて
どこの都市の夜市ナイトマーケットにおいても定番商品になっていますので
おそらく全土で数千の規模で寿司の屋台が根付いているはずです。
まず熱帯のタイにおいて、生鮮食品や作り置きした加熱卵などを取り扱うことへの疑問がありますが
タイで食品の販売を扱うナイトマーケットはその名の通り
日が落ちてから仕込みを始めて販売用の食品類が日光にあたることはないので
気温も落ちてきた夜間に一気に製造販売してしまうことで、衛生上の安全性はかなり上がっているようです。
また、タイ人の習慣として屋台の厨房は全てユーザーにガラス貼りにするという習慣があるために
使い残しの古い素材を翌日も持ち越して使うのでという危険性はかなり低いようです。
あくまでも個人的経験ですが
私自身も10年以上の滞在生活の中で夜市で買った品物で食中毒になったことは一度もありませんので
衛生管理意識の極度に発達したタイであるからこそ、寿司の屋台などという離れ業が可能なのかもしれません。
それから寿司飯用の酢に関しては、日本製の普通の穀物酢と匂いのきつくないハーブ類などを使っているお店が多いようです。
おそらくこのハーブ類には酢とともに抗菌作用があると思われますので、このへんも衛生面での合理性と味の旨味の両立があるようです。
タイ版のパック寿司に使うシャリですが、タイの国内においては北部地方で十分な量のササニシキなどが栽培されていますので
コスト的にもタイ米よりは高いものの、少量での購入でも日本のササニシキの半分弱の価格で入手できます。
タイで穫れるササニシキは日本の物よりは旨味に欠けますが
通常の味覚の日本人であればオニギリにして十分食べられる質なので
「廻る寿司」のつもりで食べるぶんには全く問題はありません。
ネタとしては飛っ子とや焼きサーモンが人気のようです。
私のような日本人からすると、中途半端な魚介系のネタよりも
アボカドや山菜のような植物系のネタの方がさらに美味だと思われるのですが
寿司好きのタイの人達の味覚はまだそこまでは進んでいないようです。
実際にタイ各地の夜市を見て回ると分かりますが
タイ人というのは食に関しては凄まじく保守的で新しい物をほとんど受け入れません。
この辺は人種的にも言語的にも兄弟関係にあるラオス人が、日常食としてパン食を完全に受け入れたのと正反対です。
今後さらに経済成長を続けるであろうタイ王国で
最後にして最強最大のマーケットの広さを持った庶民用の夜市に、海外展開で食い込んで行けるかどうか
寿司の屋台に関しては食材だけでなく、日本のオペレーション業の海外展開なども含めて
面白いことになるのではないかと思って観察しています。