今や日本でも個人主義や能力主義が叫ばれ始めて久しいです。が、本来日本の仕事に対する価値観は、個人一人の能力だけではなく、会社の従業員や経営陣が一丸となって力を合わせてひとつの仕事を達成するというものでした。
どんなに優れた人間でもたった一人のワンマンプレイでは仕事を完遂することはできません。 逆に一人ひとりの能力に偏りがあっても、チーム一丸となって協力することによって、そしてお互いの欠点を補い長所を伸ばしあうことによって、どんな困難も乗り越えていったのが、本来の日本人の姿なのです。
こういったチームプレイの概念は、特に新人を助け一人前の仕事人に育て上げていく際に非常に理に適っていたものなのです。
どんなに優れた社会人でも、社会に出始めたころの新人時代は、同じ職場の先輩たちに助けられて成長していきました。
新人育成とチームプレイを重視する日本企業と、海外の個人主義を基本とした成果主義では、根本的な部分からして違うために、むやみに外部の価値観を日本の仕事の現場に考えもなしに導入し続けていく企業が増えていった結果、現在の日本企業は企業全体で人材を育てていくと言う一番大切な部分を見失っていってしまったのです。
私は小さいながらデザイン事務所を経営しているのですが、新人にいつも言っていることは、欠点を補うことよりも長所を伸ばすことに専念しなさいということです。 例え欠点があったとしても、複数の人間が集まって仕事をすれば、誰かが誰かの欠点を補ってくれるのです。
確かに何でもこなせる人間ならばどんな仕事にも対応できますが、一人ひとりの人間のキャパシティには限界があるため、その能力の総量は自ずと決まっていってしまいます。 ならばたったひとつの能力に全部注ぎ込めば、その道では誰も敵うことのできない人間に育っていくのです。
色彩能力に優れた人材、無機質のデザインに優れた人材、生き物の描写だけは得意だと言う人材、私の職場にはこういったたった一つの能力に秀でたスペシャリストがそろっています。しかし個人個人で能力に偏りがあるために、チーム全体で仕事をして初めてその真価が発揮されるのです。
今一度基本に立ち返り、個々の能力を補い合いながらより有効活用できる、会社全体のチームプレイを重視した経営戦略を海外に発信していくことが大切であると、日々考えています。