中国で日本のレストランをオープンさせたいという夢を叶えられた方の貴重な体験談をお伺いしました。
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日本の老舗レストランの海外進出プランに合わせて、
北京で日本食レストランの立ち上げスタッフを任されました。
私が担当したのは、
(1)店舗内装、(2)衛生当局の検査対応、(3)ホール責任者(中国人)の育成の3点。
どの項目も海外進出の成否を左右する、大切な任務です。
赴任した時にはすでに内装工事が半分ほど終わっていましたが、
初日から工事のでたらめぶりに衝撃を受けました。
お店の色彩コンセプトは「オールホワイト」で、
床、窓枠、看板、食器も含めすべて白で統一するというものでした。
しかし、行ってみると床のタイルが薄いグレーになっています。
工事責任者に尋ねると、「グレーの方がかっこいいと思った」との回答。
どうして図面通りにしてくれないのか、と質問する私に対して、
グレーの床のカッコよさを延々と語る責任者。発注者の意見は無視。
まったく話がかみ合いません。海外進出ありがちなカルチャーショックです。
しかしショックを受けているだけではプロジェクトは前に進みません。
最後は「グレーのカッコよさはわかったから、白で張り替えてほしい。
そうでなければ工事は中止する。料金も払わない」と説得して、
翌週にフロアのタイルを全て張り替えてもらいました。しかし、ここで1週間のロス。
似たようなやりとりが数回あり、工事は約1カ月延びましたが、
全て工事側のミスということで、金銭的には予算内で収まりました。
並行して進めていた衛生当局への許認可申請作業は、
書面でのやり取りは思ったよりもスムーズに進み、
あとは現場での検査のみという段階となりました。
しかし、検査のたびにささいな注文をつけられ、指摘事項に対応して再検査、
また別の個所に注文を出されて、再々検査--と続き、気づけば1カ月が過ぎていました。
どうすれば検査にパスできるのか見当もつかず、中国人スタッフに尋ねたところ、
なんと「賄賂が必要」という返事。しかし、現在は汚職に対する規制が厳しいため
現金で賄賂は渡すことはできません。
「現金は渡せませんよね」というと、中国人スタッフは呆れた顔で
「衛生当局の担当者との会話にヒントがたくさんあったでしょう?」と言います。
どうやら「子どもが高校生になって、iPhoneをほしがっている」とか
「授業でiPadが必要になった」とか、雑談と思っていたそういう発言が
実は「賄賂の要求」だったようです。
この時、あと30分で再々々々々検査というタイミングだったので、
中国人スタッフをアップルストアに走らせ、iPhoneとiPadを購入。
検査前に担当者に手渡したところ、翌日には「合格」のメールが送られてきました。
海外進出のスタートアップはなかなかスケジュール通りに進まない、というのが通例ですが、
まさにその通りになってしまいました。
その後、3か月ほど遅れはしましたが、ようやく開店にこぎつけて、
中国人のホール担当スタッフに日本風サービスのノウハウを教える日々が続きました。
無我夢中の日々でしたが、半年ほど経った時、スタッフが私のヘアスタイルやアクセサリー、
ちょっとしたしぐさを真似していることに気づきました。
さりげなく尋ねると、「私たちはあなたをお手本にしています」と答えてくれました。
いままでの苦労が報われた瞬間でした。
今では、中国人スタッフも育ち、白で統一された未来的空間と
伝統的な日本食と日本的サービスが評価され、北京の人気店の一つとなりました。
現地の習慣を受け入れつつ、粘り強く日本のやり方を理解してもらう。
海外進出で成功するにはこの2点が欠かせないと思います。