海外進出をする際に抑えておくべきお金のこと、税制のこと。中でも「二国間租税条約」についてみなさんご存知でしょうか?二国間租税条約とは二国間での「二重課税の回避」と「脱税防止」を目的として制定された条約です。
日本はアメリカ・イギリス・中国をはじめ、現在(2017年)69条約を締結しており、120カ国・地域との間に効力を有しています。
※租税条約には、国際標準となる「OECDモデル租税条約」があり、OECD加盟国を中心に、租税条約を締結する際のモデルとなっている。
【OECDモデル租税条約の主な内容】
○ 課税関係の安定(法的安定性の確保)・二重課税の除去
源泉地国(所得が生ずる国)が課税できる所得の範囲の確定
- 事業利得に対しては、源泉地国に所在する支店等(恒久的施設)の活動により得た利得のみに課税
- 投資所得(配当、利子、使用料)に対しては、源泉地国での税率の上限(免税を含む)を設定
居住地国における二重課税の除去方法
- 国外所得免除方式又は外国税額控除方式
税務当局間の相互協議(仲裁を含む)による条約に適合しない課税の解消
○ 脱税及び租税回避等への対応
税務当局間の納税者情報(銀行口座情報を含む)の交換
滞納租税に関する徴収の相互支援
日米両国政府は戦略的同盟国家という経済的に緊密な日米二国間関係を前提に、投資交流を促進するために投資利得に関する源泉地国課税を大幅軽減するとともに、それにともなう脱税防止を規定しています。(平成16 年3月30日に発効)
基本的には、以下のような制度です。
企業の母国でのみ課税し、所得を得た国では免税(又は課税額の軽減)する、つまり<居住国課税×源泉地国免税>というルールにより、二重課税を防止するというものです。
日本企業がアメリカで得た所得はアメリカでは課税されず日本でのみ課税されるというものですね。※アメリカ企業が日本で事業を展開する場合もしかりです。
日米租税条約は以下のような特徴を有しています。
①基本的に最新のOECDモデル条約に準拠している
②配当等の投資所得や知的財産の使用料に係る所得に対する源泉地国課税を大幅に削減している
③多様な事業体に係る課税上の取り扱いにつき調整が図られている
④条約の濫用を防止するための規定が数多く盛り込まれている
また日米租税条約のポイントは以下になります。
・投資所得の免税
・移転価格税制の予見可能性の確保
・条約違反の米国立法に対する協議
・支店利子税の免税措置
・エクサイズ・タックスの免税
・課税の取扱いが異なる事業体に対する条約の適用関係
・租税回避行為の包括的防止措置
世界の税制事情については「進出先上位国の税制」もご参照ください
出典・引用
・財務省:租税条約に関する資料
・財務省:日米租税条約のポイント
・外務省:日米租税条約