投稿日: 2024年11月24日

昨夜 (2018.0216 Friday) は盛和塾シカゴの勉強会(英語)でした。

Calsoft Systems (コンピューターシステムのサービスの会社)
の創業者のネムさん(Mr. Nem Bajra、(Los Angeles))がゲストスピーカーで、
稲盛経営哲学の精神的・支柱である

“6つの精進”

に付いての講演と、Q&Aがありました。

ネムさんは、
ネパールの首都カトマンズ出身で
日本では京都大学に学び、
本社カリフォルニアにて創業、全米展開しておられます。
(シカゴにも事務所があります。)

「6つの精進」
( Practice the 6 Endeavors )

とは…、

(1) 誰にも負けない努力をする。
(2) 謙虚にして奢らず。
(3) 毎日の反省及び利己の払拭
(4) 生きていることに感謝する(幸せを感じる心は「足るを知る」心から生まれる。)
(5) 善行・利他業を積む。i
(6) 感性的な悩みをしない。

なのですが、その第一項目の

「誰にも負けない努力をする」
( Work harder than anybody else. )

その解釈・見方に付いて活発な意見が交わされ、
他の項目にほとんど進めないくらいでした…。

「誰にも負けない」とは…?

何・誰と比較して、どのように負けない努力なのか?
他人と? 時間的に? 物理的に? 精神的に…?

自分では精一杯、努力をした(つもりになっていた)としても、
その努力は、

果たして正しい手段・方向なのか?
周りに、現在・未来の社会に、受け入れられ、
価値として認められるものか…?
ものになり得るか…?

まして、20世紀後半から今日、
更には今日から近未来への
テクノロジーの進化・発展はとてつもない速さです。
まさに文字通り幾何級数的なスピードです。

仮に今、受け入れられるものだったとしても、
精一杯、努力に努力を重ねたとしても、
その努力の果実が実った時には、
既に時代にそぐわないものになってしまっているかもしれない…。

そんな革新的な進化が次々に起きている今…。

私たちはその真っ只中に生きています。

テクノロジーの変化は、
(個々の、好むと好まざる、に拘わらず)

日々の暮らしや社会に、
より便利に、より豊かに…、
と、その方向で

組み込まれて来ました。

事実、
メインフレーム(コンピュータ)が登場した1970年以降、
10年ごとに画期的な新技術が生まれて来ています。
そして新技術は新サービス・新製品を生んできました。
それを生み出す企業のみが勝ち残っていきます。

1970年台 メインフレーム(コンピュータ) Mainframe Computing =>  IBM.
1980年台 パソコン (Personal Computer) =>  Apple, Dell, Hewlett-Packard
1990年台 インターネット・情報通信 (ICT) =>  AOL, Google, Yahoo
2000年台 ソーシャルメディア (SNS) =>  Myspace, Facebook, Twitter、ライン
2010年台 ロボット、人工知能, ブロックチェーン・暗号通貨

そして…、今や、既存のコンピューターをはるかに凌ぐ性能を持つ
「量子コンピュータ」(最大1億倍高速に解く)
の到来も間近だと言われています。

添付画像チャートは新しく生まれたテクノロジーが如何にして
社会に溶け込んでいくかを示した
成長曲線(Technology to Market Curve)です。

新技術やサービスは、
社会に受け入れられ、安定期に入るまでにアップ&ダウンします。

「ダウン」のまま沈んでしまう技術や企業も多いことでしょう。

そんな中、
「誰にも負けない努力」をした…(はず)の


アマゾンのジェフ・ベゾスが世界一の富豪になりました。
総資産 10兆6,000億円との事です。

創業者で現在もCEOを勤めるジェフ・ベソスは
1995年7月にサービスを開始しています。

では、どの様に…?

彼の成功の要因は何でしょうか?

その理由の1つが、アマゾンの企業理念に…。

「地球で最も顧客中心主義」  の企業になる…。

企業には、様々な利害関係者が存在します。
株主、従業員、仕入業者、競合他社…。

経営学の企業分析としては、
・顧客と ・競合と ・自社の
3要素を考えます。

その内、ジェフ・ベゾスの注目はあくまで

「顧客」   のみ。

他の、株主、従業員、競合他社に対しては、
ほぼ全くと言っていいほど力点が置かれていません。

たとえば、

(a) 株主に対しては…、

1997年の株式上場以来、ほとんど配当を出していない。
赤字体質で、ひたすら将来成長への資金を投資し続けてもらって来ました。

利益が出た場合であっても、その分、徹底的に価格低減に努め、
株主に対してではなく、

顧客に還元しようとしています。

(b) 従業員に対しては…、

一貫して 「顧客のために徹底的に働け!」

入社希望者が「家庭と仕事の両立」を希望した場合は、採用されません。
当然ながら社員の定着率はかなり低くなります。

… これは、私たちの抱く経営哲学、
「大家族主義」
「従業員とその家族を幸せに!」

と全く相いれない考え方です。

(c) 競合相手に対しては…、

一般的には、企業は競争相手を分析します。
そして、何らかの要素で差別化をはかろうとします。
アマゾンは、それをやりません。
競合他社の動向に興味・関心がないのです。
アマゾンが興味・関心があるのは、ただ一点、

「顧客都合」…。

「地球で最も顧客中心主義の企業」
というのは単なる美辞麗句ではなく、

創業以来、とにかく徹底しているわけです。

「顧客」以外の利害関係者である、
株主、従業員、競合他社などに
対しての配慮はありません。

・株主を長期で囲い込んでおこうという気がなく、
・従業員を長期で働いて頂こうとする気持ちもなく、
・業界・競合他社からの非難を避けようという気も全くない。

徹頭徹尾「顧客」に集中です。

利益を出して株主に配当で還元するのではなく、
将来へのアマゾンの成長に期待する投資家たちからお金を集め続けることで
成長してきました。

当然、アマゾンは全ての競合他社から嫌われます。
他の企業は本業で何らかの利益を出そうとするからです。
送料負担を顧客に求めるのは当然です。

本を得ることでスタートしましたが、
その従来の慣習を一方的に破壊しました。
事実、20年間で、アマゾンは膨大な競合他社を倒産に追い込んできました。

過去20世紀の常識であれば、
アマゾンは独占禁止法違反に該当するレベルの大企業に成長しました。
今や、インターネット上の小売業として圧倒的な影響力を持っています。
その独占企業に該当する会社が、法律違反になっていないのです。

それは、

「顧客を喜ばせている」
「顧客が利益を得ている」

から…。

独占禁止法は、
ある企業の独占によって

「消費者が不利益を受けないように」

そのための法律です。

市場の独占状態のアマゾンは、
その独占によって消費者に不利益を与えていないのです。

消費者は、
アマゾンが強くなれば・なるほど
色々な商品・サービスを、
無料、或いは、極めて低価格 で提供される分、

「利益を得ている」

という訳です。

「地球で最も顧客中心主義の企業」

その目的のためには、

消費者目線を外さず、
その時代・時代のベスト・テクノロジーを活用する。

(a) ワンクリックオーダーリングのシステム。
あらかじめ決済情報をデータベース管理することで
ユーザーに1回のクリックを強いるだけで、決済してしまう仕組み:特許を取得。

(b) レコメンデーションの技術。
XML などの会社を買収して築き上げたもの。
秀逸なレコメンド機能。

(c) Webサービスの技術。
外部の様々なサービスとの連携により
アマゾンの機能がネット上に拡張。

更には、テクノロジーに裏打ちされたマーケティング、
● アフィリエイトプログラムを創業直後から活用
● 顧客のレビューをデータベース化
● 中古マーケットを作って新品販売の機会損失を防ぐ…、

そして、
新規分野への取り組みも積極的で、
● キンドルで電子書籍戦争の口火を切り、
● 「本」と「音楽」で集めた顧客をベースに
● インテリア、スポーツ用品、日用雑貨等、様々な分野に進出…。

等々。

「うちは顧客中心主義です」
と掲げるのは簡単ですが、
アマゾンはその綺麗事をまさに妥協を許さず文字通り実践した…。

首尾一貫して「徹底的に」やり続けているのです。
だから、徹底できない競合他社は勝てません。

守りに入る気は全くなく、
利益を出す気もなく、
(上場後4年半利益を出していない、利益は数パーセント)

ただひたすら、「顧客のためだけ」に投資を続ける…

100% 攻撃型 のこの会社に勝てる企業
が今後出てくるでしょうか?

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中国のアリババのように、
国に(アマゾンが中国で事業が出来ないように)

規制によって守ってもらうか、
アマゾンと競合しない事業をやるか
しかない、のでは…?
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「地球で最も顧客中心主義の企業」

に徹底した…

その結果、

配当は得られなかったものの、
投資家たちは
皆、莫大な利益を得ることになりました。

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1997年のナスダック上場以来、
株主に対し配当を配ったことがなく、
2014年時点で17年連続で無配

一方、

株価は、
1997年5月上場時に    $15.75。

2分割2回、3分割1回の株式分割を経て、
2018年2月時点で     $1,450。
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当初から、
「しばらくは利益が出ない」

と、宣言してビジネスを始めたベゾス。

在庫や物流を含め、
「ある一定規模になるまで儲からない」

と、説明して投資家からお金を集め続け、

実際にビッグビジネスに育て上げることに成功しました。

… そして、ジェフ・ベゾスはその莫大な果実を得て、世界一の大富豪となりました。

「顧客が大事」というのは全ての企業にとって同じです。
誰でも簡単に言えるし、耳触りの良い言葉です。

しかし…、
「顧客を大事にする」とは、
どの程度…?

それは、
「顧客を第一優先」にする、
ということ。

即ち、
「顧客以外の他者の優先順位を下げる」ということ。

顧客中心主義ということは、
「顧客以外は中心ではない」ということです。

「顧客を大事にする」と

耳ざわりのいい
耳に心地いい
聞こえのいい

言葉を発するのは容易ですが、
「徹底して実践する」
ことは極めて大変だ、ということです。

ネットの技術を最大活用しつつ
顧客優先・顧客中心を貫いた
アマゾン。

その目的を遂行するため、
最新・最高の技術を利用する事で、
顧客満足度を徹底して高める、
実践する。

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その一方で
そこで働く54万人とも言われる従業員やその家族を
どのように支えてきたのでしょうか…?
+++++++

会社の目的・経営的特徴は、

「顧客中心主義」「発明中心主義」「長期的視野」を掲げ、

「売上高や利益を最大化することではなく、
「フリーキャッシュフローを 最大化する ことを目的にしている」

との事。

いずれにせよ…、
事実…、


ジェフ・ベゾスがビル・ゲイツを抜いて

世界一のとんでもない富豪になった…。

やはり、この事実は
私たちにはなかなかピンと来ず、
受け入れがたいものがありますが、

実際に、

ジェフ・ベゾス自身が、個人資産で世界一になっただけでなく、

アマゾンという会社自体も、
近々に世界一の時価総額になる、 と言われています。

でも、よくよく考えてみれば…、

顧客中心、の「顧客」とは、

「私達」消費者、即ち「市場」です。

改めて、

「テクノロジー」 X 「顧客(市場)」

の威力を感じます。

そもそも、
「テクノロジー」は…、
世のため人のために、

「時代の流れや変化」 と共に、

市場・顧客ニーズに応えて

「生まれ」、

市場・顧客ニーズに応えて

「進化・発展して行く」

もの、である以上、

やはり…、
私たちは、

原点に立ち戻り、

会社は「何のために存在を許されているのか?」

を考え、

「自分たちの中」 だけ…、
会社や業界の枠組みの中に留まらず、

枠の外を見、
想像力を活かして輝く未来を期待し、

広く社会の動き
「時代の流れの変化」 に敏感になり
「時代の流れに沿って」、

果敢にその「変化や流れの波に乗る」。

そして、’
アップ&ダウンにもくじけない「勇気」…。

「決断による集中力」を使い、

新しい波に乗れるためのチャレンジを続けて行く以外に

明日の扉 を見つけ、
未来の扉 を開けることはできないのだと思います。

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日本もそのようですが、
今年のシカゴの冬は、不安定で不思議な天候が続いています。

ドライブウェイに雪が積もり、
車を出し入れするのに
雪かきしなきゃ…と思って1時間をかけて作業したばかりなのに

その夜また一晩で新雪が…。

面倒だから、放っておいたら、
次の日は、日本よりむしろ暖かい気温で
その雪がみんな溶け出して「ラッキー !」

そう思いきや…、

昨夜の勉強会の参加時には雪が溶けてなくなっていたのに、

今朝、見るとこんなに雪が…。

… そんな繰り返しです。

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